昔の航空写真の見かた カコマップの使い方
昔の空中写真を開いて最初に困るのは、どこを見ればよいのか分からないことです。白黒で粒子が粗く、道路の形も建物の並びも今とは違う土地は、ぱっと見では同じ場所だと思えません。カコマップの地点ページは上から順に、昔と今の比較、その地点で見られる写真の年代、土地のあゆみ、標高、鉄道でのアクセス、写真から見た変化のようす、地価公示価格の推移、近くの地点、その地点が登場するよみものと並んでいます。どの節を何のために見るのかを、豊洲 や 高輪ゲートウェイシティ を例に順を追って説明します。
比較は 3 つの見かたを行き来する
ページのいちばん上は、昔と今を突き合わせる比較の画面です。開いた時点では多くの地点で 1961〜69 年の写真が昔の側に選ばれていて、「昔 ⇔ 今」のスライダーを動かすと 2 枚の重なり具合が変わります。年代のボタンを押すと昔の側だけが選んだ年代に入れ替わり、今の側は動きません。構図を固定したまま時間だけを動かせるのが、古い地図帳を並べて眺めるのとは違うところです。
重ね表示の利点は、画面の同じ位置で新旧を突き合わせられることです。海岸線や川筋のように線で追える地物は、スライダーを少しずつ動かすとずれ方がよく分かります。建物の形や区画の切り方を細かく確かめたいときは「左右に分けて比較」に切り替えると目が迷いません。手を止めて眺めたいときは「自動で切り替え」に任せると、2 枚が交互に入れ替わります。写真が用意されていない範囲には提供範囲外であることを示す画像が入るため、その部分は判断の材料になりません。
| 操作 | 画面で起きること |
|---|---|
| 昔 ⇔ 今 のスライダー | 昔の写真と今の写真の重なり具合が変わる |
| 年代のボタン | 昔の側だけが選んだ年代の写真に入れ替わる |
| 左右に分けて比較 | 画面を左右に分け、同じ範囲を並べて見る |
| 自動で切り替え | 2 枚が一定の間隔で交互に入れ替わる |
| 地形を重ねる | 写真に地形の起伏を重ねて見る |
| 3D で見る | 起伏を立体で見て、ドラッグで視点を動かす |
画面のすぐ下には、表示している年代の見どころが 1 行だけ出ます。年代を切り替えるとこの 1 行も入れ替わるので、その年代の写真で何に目を付ければよいのかが先に分かります。なお 3D の起伏に使う標高は今の測量にもとづく地形で、写真の年代当時の地形を再現したものではありません。昔の写真を貼った立体は、今の起伏の上に昔の見た目を載せたものとして見てください。
変わらないものを先に探す
見比べのこつは、変わったものではなく 変わらないものを先に探す ことです。街道の曲がり方、河川と水路の筋、海岸線の向き、線路の通り、寺社の境内、学校の敷地。これらは周りが大きく書き換わっても位置が動きにくく、新旧を重ねるときの目印になります。
高輪ゲートウェイシティはその典型です。1936〜42 年頃の写真でも 1974〜78 年の写真でも、車両基地の線路が画面の中央を細長く貫いています。線路の束という目印が半世紀以上動かないので、その脇で何がいつ変わったのかを線路を基準に追えます。逆に 夢の島・新木場 のように、昔の年代では海面しか写っていない地点では、陸側に残る目印から見当をつける読み方に切り替えることになります。
目印が見つかったら、それを画面のどこに置くかを決めてしまうのも手です。目印を画面の中央に置いたままスライダーを中ほどで止めると、2 枚が半分ずつ混ざった状態になります。そこから目を離さずにスライダーを小さく往復させると、動かない線と動く面がはっきり分かれて見えてきます。いきなり全体を見渡そうとせず、画面を四つに区切って一区画ずつ確かめていくと取りこぼしが減ります。
あゆみの節にある「写真の見どころ」の表も、この目印探しの手がかりです。表の年代のセルはそのまま押せて、押した年代の写真が比較の画面に読み込まれます。表で読んだ着眼点を、いちいち上に戻らずそのまま画面で確かめられます。土地のあゆみの本文と主な出来事の年表もこの節にあるので、写真で気づいた変化がいつ何によって起きたのかを、その場で突き合わせられます。
年代は一段ずつ送る
昔と今を 1 往復させただけで終えると、変化の途中を取りこぼします。埋立地や造成地では、護岸だけができた段階、区画が切られた段階、建物が載った段階が、別々の年代の写真に残っていることがあります。年代は一段ずつ送る のが基本です。
送るときは、追う対象をひとつに絞ってください。海岸線だけを追う、線路だけを追う、と決めて古い側から順に送ると、どの年代のあいだに動いたのかが特定できます。全部を同時に見ようとすると、年代ごとの画質の差に目を取られて肝心の変化を見落とします。古い年代の写真は粒子が粗く陰影が強い一方、新しい年代はカラーで細かく写るため、同じ地物でも見え方がかなり違います。
その地点で見られる写真の年代の節には、古い側から今までを一列に並べたタイムラインがあります。目盛りを押すとその年代が比較の画面に入るため、節から節へ戻らずに順送りできます。用意されている年代は地点ごとに違い、1936〜42 年頃までさかのぼれる地点もあれば、1961〜69 年と 1974〜78 年の 2 枚だけの地点もあります。年代ごとの提供範囲は地域によって異なるため、同じ年代のボタンでも撮影の時期が土地によってずれます。年代の並びと、それぞれの年代の写真がどんな見え方をするのかは 空中写真の年代ガイド にまとめました。
標高は東西・南北の断面で読む
標高の節は、まず地点の中心の標高を 1 行で示し、その下に東西・南北 2 本の断面グラフが続きます。豊洲では豊洲駅付近の 2.4 m という値が出ます。ただし 1 点の値だけでは、その土地が平らな面の上なのか坂の途中なのかが分かりません。断面グラフは中心から東西・南北へおよそ 1 km ずつの範囲を切って、地面の高さの並びを線で見せます。ここで読むのは高さの数値ではなく 線の形 です。
2 本の線がどこを切ったのかは、グラフの下のロケータで確かめられます。今の空中写真の上に、南北の断面が縦の緑の線、東西の断面が横の青い線で重なります。ロケータは押すと拡大でき、グラフの上を指やカーソルでなぞると、なぞった位置がロケータ側にも印で示されます。グラフに出た谷や崖が写真のどのあたりなのかを、そのまま突き合わせられます。
縦方向は大きく引き伸ばしてあります。断面の見出しに「縦 ×57 に拡大」のように誇張率が添えてあり、画面の幅によって倍率は変わります。引き伸ばさないと数 m の起伏が線として見えないためですが、その代わり傾きは実際よりずっと急に見えます。線の傾きの見た目をそのまま土地の勾配として受け取らないでください。
高輪ゲートウェイシティの東西の断面が分かりやすい例です。中心の 3.4 m から西へ向かうと 20 m を超え、東へ向かうと 2 m 前後まで下がります。中心の 1 点だけを見て平らな低地だと読むと、すぐ西に台地の崖が迫っていることを見落とします。多摩ニュータウン (多摩センター) は逆の読み方になります。中心の 88.6 m は断面のなかでは低い側で、東西も南北も端のほうが高く、100 m を超える区間があります。丘を削り谷を埋めた造成地であることが、線の形に残っています。
線が途切れて空白になっている区間は、標高データの提供がない場所です。海や川などの水面がそれにあたるので、途切れた区間は水面 と読み替えてよいことになります。豊洲の断面では東西・南北ともに一部が途切れ、埋立地が水に囲まれていることが線の欠けとして現れます。断面の高さはいずれも地表面の値で、駅のホームが地下や高架にあっても、載っているのは地面の高さです。
| 地点 | 中心の標高 | 断面から読めること |
|---|---|---|
| 豊洲 | 2.4 m | 東西・南北とも高低差が小さい平らな面。水面にかかる区間は線が途切れる |
| 高輪ゲートウェイシティ | 3.4 m | 西へ向かうと 20 m を超え、台地の裾に接する位置だと分かる |
| 多摩ニュータウン (多摩センター) | 88.6 m | 中心は低い側で、東西・南北とも端のほうに 100 m を超える区間がある |
変化の大きさは分布のなかの位置で読む
写真から見た変化のようすの節では、昔と今の画面がどれだけ違うかを数値にしています。読みどころは値そのものよりも、掲載しているほかの地点と比べてどのあたりなのかです。節には最小・中央値・最大を並べたバーがあり、その地点の位置に印が付きます。あわせて「大きい部類」「やや小さい部類」といった言葉が添えられるので、数値を覚える必要はありません。豊洲は分布の上のほうに、多摩ニュータウンは中央値より下に置かれます。
使う順番も決まっています。先にこの節で分布のどのあたりかを見て、それから比較の画面に戻る流れです。分布の上のほうにある地点なら、画面のどこかに面ごと入れ替わった場所があるはずだと見当をつけて探せます。逆に分布の下のほうにある地点では、街区の形や建物の建て込み方の変化のように、面としては動かない差を探すことになります。近くの地点の節から隣の土地へ渡って同じ節を見比べると、その地域のなかで変化が集まった場所も見えてきます。
値が小さい地点が変わっていないとは限りません。浮島・殿町 キングスカイフロント は臨海の工場地帯から研究開発の街区へ用途ごと入れ替わった土地ですが、建物が建て込んだ画面が別の建物の画面になる変化は、海が陸になる変化ほど数値には出ません。撮影の季節による草木の写り方や、白黒とカラーの違いも数値に混ざります。数値は目安として受け取り、最後は写真そのものを見比べるのが確実です。
公示価格は標準地との距離とあわせて見る
地価公示価格の推移は、その地点にいちばん近い標準地の系列です。標準地の所在地・用途・地点からの直線距離を添えているので、グラフの形より先に距離を見てください。折れ線の点にカーソルを合わせるか指で触れると、その年と 1 平方メートルあたりの価格が出ます。「推移を表で見る」を開けば、全部の年を数字で読めます。
高輪ゲートウェイシティでは、約 337 m 離れた高輪 2 丁目の住宅地の系列が並び、2016 年の 106 万円から 2025 年の 168 万円へ動いています。いっぽう 台場 のように、近くに標準地がない地点もあります。台場に並ぶ系列は約 1.7 km 離れた有明 3 丁目の店舗・事務所・倉庫の用地のもので、台場そのものの土地の値ではありません。距離が離れているほど、その地点の事情とは別の動きが混ざります。
多摩ニュータウン (多摩センター) の系列は、下がってから戻る形の例です。約 721 m 離れた落合 1 丁目の住宅地で、2002 年の 25 万 1 千円から 2012〜2013 年に 21 万円まで下がり、2025 年は 25 万 2 千円です。写真の見え方がほとんど変わらない年代の裏で、土地の値がこう動いていたことは写真だけでは読めません。公示価格は毎年 1 月 1 日時点の標準地について公表される値で、個々の土地の取引価格を示すものではありません。
| 地点 | 標準地の用途 | 地点からの距離 | 1 平方メートルあたりの価格 |
|---|---|---|---|
| 豊洲 | 住宅 | 約 448 m | 2012 年 42 万 9 千円から 2025 年 100 万円へ |
| 高輪ゲートウェイシティ | 住宅 | 約 337 m | 2016 年 106 万円から 2025 年 168 万円へ |
| 多摩ニュータウン (多摩センター) | 住宅 | 約 721 m | 2002 年 25 万 1 千円から 2012〜2013 年 21 万円を経て 2025 年 25 万 2 千円 |
| 台場 | 店舗・事務所・倉庫 | 約 1.7 km | 2007 年 105 万円から 2025 年 134 万円へ |
地点から地点へ、地図の外へ
ページの下のほうには、近くの地点と同じ成り立ちの地点がミニ地図つきで並びます。埋立地から埋立地へ、削った丘から削った丘へと渡っていくと、同じ年代の写真でも土地ごとに事情が違うことが見えてきます。その地点が出てくるよみものへの入口も同じあたりにあります。行き先を決めずに眺めたいときは、ページの末尾にあるランダムな地点のボタンを押すと、思いがけない土地に飛べます。トップページには日替わりの「きょうの 1 地点」も出ます。
見比べたい場所が地点ページに用意されていないときは、地図で見る を開いてください。全国どこでも地図を動かして、昔と今の空中写真を重ねられます。自分のいる場所へ移動するボタンもあるので、住んでいる街から始めることもできます。昔の写真が用意されていない範囲では、その旨を画面が案内します。地点ページからは位置と年代を引き継いで開けるので、画面の枠の外側が気になったときの続きに使えます。
標高も変化の数値も公示価格も、写真を読むための補助線です。読み解きの主役は写真そのもので、数値は見立てを確かめる材料 として並べています。掲載している標高は地表面の測定値であり、水害や地震の想定を示すものではありません。土地ごとの災害の想定は、国土交通省のハザードマップポータルサイトから各自治体の公表資料を参照してください。
写真や数値の出どころは 出典とデータについて に、見比べられる場所の一覧は 地点をさがす にまとめています。気になる土地の名前を思い出したら、そこから開いてみてください。
本記事の価格は各時点の実例であり、執筆後の市場価格を反映するものではありません。