空中写真の年代ガイド 1928 年から 1990 年
昔の空中写真を見比べようとしたとき、最初につまずくのは「どの年代の写真が使えるのか」です。年代別の空中写真は、日本全国を同じ年に一律で撮ったものではありません。撮影の目的も撮った人も違ういくつもの写真群が、年代ごとに層をなして積み上がっています。この記事では 8 つの世代それぞれの性格と、どこで見られるのか、そして写真そのものの見え方がどう違うのかを、順に見ていきます。
8 つの世代が積み重なっている
年代別の空中写真は、撮影時期ごとに 8 つの世代に分かれています。古い順に 1928 年頃、1936〜42 年頃、1945〜50 年、1961〜69 年、1974〜78 年、1979〜83 年、1984〜86 年、1987〜90 年です。どの年代も表記に幅があるのは、ひとつの世代がひと夏で撮り終わるものではなく、数年かけて地域ごとに撮り分けられたためとされます。
大事なのは、この 8 つがどの土地にも等しく用意されているわけではないという点です。古い世代ほど撮られた範囲は狭く、カラーになってからの世代でも都市部に寄っています。ひとつの場所で 8 つ全部がそろうことはなく、多くの地点で使えるのは 4 つから 7 つほどです。2 つか 3 つにとどまる地点や、ひとつの世代しか使えない地点もあります。
地点ページの「この地点で見られる写真の年代」には、その場所で実際に写真が提供されている世代だけを並べています。選んだのに写真が出てこない、という空振りは起きない作りです。
| 年代 | 写真の色 | おもな提供範囲 |
|---|---|---|
| 1928 年頃 | 白黒 | 大阪市の周辺のみ |
| 1936〜42 年頃 | 白黒 | 東京 23 区や大阪市の周辺など |
| 1945〜50 年 | 白黒 | 全国の主要な都市の周辺 |
| 1961〜69 年 | 白黒 | 全国の広い範囲 |
| 1974〜78 年 | カラー | 山間部までふくむ、ほぼ全国 |
| 1979〜83 年 | カラー | 都市部を中心とした範囲 |
| 1984〜86 年 | カラー | 都市部を中心とした範囲 |
| 1987〜90 年 | カラー | 都市部を中心とした範囲 |
1928 年頃は大阪の周辺だけ
いちばん古い 1928 年頃は、大阪の周辺だけの世代です。国土地理院が公表している提供範囲は大阪市域で (2026 年 8 月時点)、ほかの世代のように地方の都市で選ぶことはできません。市内では 森之宮 (大阪砲兵工廠跡)、うめきた (グランフロント大阪)、京セラドーム大阪 (岩崎町) のような内陸側の地点と、ユニバーサルシティ (此花西部臨海)、コスモスクエア (咲洲)、南港ポートタウン のような湾岸の地点が、この世代までさかのぼれます。写真は市境のすぐ外側にも届いていて、あまがさきキューズモール周辺 のような兵庫県の地点や、健都 (吹田操車場跡) のような内陸の北摂の地点でも使えます。
写りは白黒ですが、粗いという印象は受けません。森之宮 (大阪砲兵工廠跡) でこの世代を開くと、市街の家並みが 1 棟ずつ見分けられる細かさで写ります。画面の中ほどには濃い樹林に囲まれた城の堀と、台形に張り出した郭がはっきり現れ、その東側には建物の少ない明るい区画が広がります。周りは短冊のように細長く分けられた田畑と、密集した家並みが入り混じったモザイクです。道路と鉄道の線は細く鮮明で、1920 年代の街の骨格をそのまま追えます。
1936〜42 年頃は陸軍が撮った写真
次に古い 1936〜42 年頃は、陸軍が撮影した写真です。提供範囲の中心は東京 23 区と大阪市の周辺ですが、それだけではありません。武蔵小杉 や 浮島・殿町 キングスカイフロント のような神奈川県の地点、舞浜 のような千葉県の地点、男山団地 のような京都府の地点でも、この世代が使えます。逆に地方の多くの都市には戦前の写真が用意されていないため、戦前との比較はこの 2 世代が届く範囲でしか成立しません。
高島平団地 でこの世代に切り替えると、画面の大半が格子状の畦で区切られた水田です。上のほうを堤と川筋が横切り、右上には工場らしい白い大屋根が見えます。下半分は樹林に包まれた集落と、斜面を段に刻んだ畑です。全体に軟らかい調子の白黒で、フィルムに由来する白い点や細い傷も散らばっています。写真の欠点というより、この年代の写真が通ってきた時間の記録として見えます。
戦前のこの 2 世代には、ほかの 6 世代と違う性質がひとつあります。戦前の 2 世代はより深く拡大できます。ただし地点ページはどの世代も同じ倍率で映すため、この違いはそこでは表に出ません。効いてくるのは、全国を自由に動かせる地図でさらに深く寄せたときです。ほかの世代が像を粗くしていく倍率でも、この 2 世代は建物の並びや樹林の輪郭を保ちます。代わりに、地図を広く引いた状態ではこの 2 世代を選べません。
1945〜50 年は米軍が撮った写真
終戦直後の 1945〜50 年は米軍が撮影した写真で、全国の主要な都市の周辺が対象です。みなとみらい や 海浜幕張 のように、埋立が始まる前の海面をこの世代で押さえられる地点があります。丘陵を削って住宅地にした土地でも、まだ手が入る前の姿がこの世代に残っています。
戦前の 2 世代が用意されていない土地では、この世代がいちばん古い写真になります。東京と大阪の周辺を離れると戦前までさかのぼれる地点はぐんと少なくなるため、地方の都市で昔の側をもっとも遠くまで伸ばせるのは、たいていこの世代です。逆にこの世代も用意されていない土地では、比較の起点は 1961〜69 年まで下がります。
洋光台 を開くと、枝分かれした谷戸の地形が画面いっぱいに広がります。谷底に沿う細長い水田が明るい線となって走り、尾根の斜面は畑のパッチと濃い樹林です。人工物はごくわずかで、集落は谷の出口に点々とあるだけです。白黒でコントラストが強く粒子も粗いのですが、その明暗の付き方だけで起伏が読み取れます。造成でならされる前の地形を確かめたいときに、いちばん頼りになる世代です。
1961〜69 年が比較の基準になる
高度経済成長期にあたる 1961〜69 年は、提供範囲が全国の広い範囲に及びます。都市部でも郊外のニュータウンでも、この世代の写真はまず見つかると考えてよく、カコマップで地点ページを開いたときに最初に表示されるのも、ほとんどの地点でこの世代です。多摩ニュータウン (多摩センター) や 千里ニュータウン (千里中央) のように、造成が本格化する直前の地形をこの世代でとらえられるため、開発の前と後を対比する起点として使いやすい世代でもあります。
写りは白黒ですが、戦後まもない世代とはだいぶ違います。高蔵寺ニュータウン をこの世代で見ると、階調は平坦で穏やかです。画面の大半は丘陵の樹林で、黒く沈んだため池が点在し、左下には耕地がのぞきます。下辺の隅には砂州をもつ川が明るく写り、その手前を鉄道が横切って沿線に市街が寄り集まっています。丘の上には造成の白い筋が刻まれ始めており、これから大きく変わる土地の入口の姿が写っています。
1974〜78 年からカラーになる
1974〜78 年は、カラーになった最初の世代です。しかも山間部までふくむほぼ全国が対象なので、戦前の写真も 1960 年代の写真も用意されていない土地でも、この世代なら昔の側を立てられます。釜石駅前 (製鉄所跡) のように、この世代だけが比較の相手になる地点もあります。
ただしカラーになった分、戸惑いも増えます。高蔵寺ニュータウン をこの世代に切り替えると、ひと続きの土地なのに、画面が横の帯ごとに違う色に分かれて見えます。上の帯は黄緑、中ほどは赤紫、下は緑という具合です。色の境目は撮影コースの継ぎ目で、別の日・別のフィルムで撮られた写真をつなぎ合わせた結果と考えられます。土地が変わったわけではないので、色の段差そのものは読み取りの材料にしません。
色に慣れて見ていくと、白黒では区別しづらかったものが分かれてきます。造成された宅地の白い道路網、整列した中層住棟の屋根、削られたばかりの裸地の明るい茶色、山地の緑がそれぞれ別のものとして見えます。中ほどの小さな池と、下辺の川の砂州も、水と土の色の差で読めます。
1979 年から 1990 年の 3 世代
1979〜83 年、1984〜86 年、1987〜90 年の 3 世代は、都市部を中心とした範囲が対象です。数年おきに写真が並ぶので、埋立や造成が段階を踏んで進んだ場所では、その途中の姿が別々の写真として残っています。護岸だけができた段階、区画が切られた段階、建物が建った段階を、それぞれの世代で拾えることがあります。
1979〜83 年は、暗く沈んだ写りになりやすい世代です。洋光台 をこの世代で見ると、影と樹林が黒くつぶれ、丘陵一面を埋めた住宅地の細かさに対して、全体の調子はかなり重く感じられます。斜めに整列した団地の住棟列と、右下に広がるゴルフ場の明るい緑、造成中の裸地の明るい茶色が、その暗さの中で目印になります。
1984〜86 年は、水面の写り方が特徴的です。六甲アイランド をこの世代で開くと、海面は濃い紺色でほとんど黒く沈み、その中に人工島の造成途上の姿が浮かびます。白っぽい未造成の埋立地、掘り返された土色の区画、すでに建った青や赤の屋根の倉庫群、コンテナヤードに整列した箱、直線の護岸と橋が、一枚の中に同時に写っています。
1987〜90 年も暗めで、緑にやや寄った発色です。高島平団地 をこの世代で見ると、上辺に川と河川敷の緑地が続き、内野の形が並ぶ運動場も見えます。中央左には整列した中層住棟の長い列、右上には工場群の青い大屋根と白い球形タンクが 3 基。斜めに走る鉄道と幹線道路の下は、隙間なく詰まった住宅地です。同じ場所を 1936〜42 年頃の水田と見比べると、半世紀の間に起きたことがそのまま分かります。
| 地点 | 使える年代 |
|---|---|
| 高島平団地 | 1936〜42 年頃から 1987〜90 年までの 7 世代 |
| 京セラドーム大阪 (岩崎町) | 1928 年頃から 1984〜86 年までの 7 世代 |
| コスモスクエア (咲洲) | 1928 年頃・1936〜42 年頃と、1961〜69 年から 1984〜86 年までの 6 世代 |
| 洋光台 | 1945〜50 年・1961〜69 年・1974〜78 年・1979〜83 年・1987〜90 年 |
| 高蔵寺ニュータウン | 1961〜69 年・1974〜78 年・1979〜83 年・1987〜90 年 |
| 釜石駅前 (製鉄所跡) | 1974〜78 年のみ |
最初に出る年代と切り替え方
地点ページを開くと、その場所で使える世代のうち 1 つが選ばれた状態で比較ビューアが動きます。選び方の基準は「およそ 60 年前に近いもの」で、その地点の提供年代の中から最も近い世代が自動で選ばれます。結果として多くの地点では 1961〜69 年から始まり、その世代が用意されていない 釜石駅前 (製鉄所跡) では 1974〜78 年から始まります。
年代の切り替え口は 3 か所あります。ひとつは比較ビューアの年代ボタンです。切り替わるのは昔の側だけで、今の写真は比較の基準面として動きません。ビューアのすぐ下には、表示している年代の見どころが 1 行で出ます。年代を変えると、その文も一緒に変わります。
ふたつめは「この地点で見られる写真の年代」のタイムライン図です。並んだ年代をクリックまたはタップすると、ビューアがその年代に切り替わります。みっつめは「あゆみ」の中の写真の見どころ表で、こちらの年代の欄も同じように切り替えに使えます。読みながら気になった年代へ、その場で飛べる形です。
昔と今の見せ方も 3 通りから選べます。スライダーで昔と今を行き来させる重ね方、画面を左右に分けて同時に見る形、一定の間隔で自動に切り替わる形です。年代を選び直しても見せ方はそのまま保たれるので、同じ構図を崩さずに古い世代へ順に下っていくと、変化の起きた順序を追いやすくなります。
見比べたい場所が地点ページに用意されていないときは、地図で見る を開いてください。全国どこでも地図を動かして、昔と今の空中写真を重ねられます。こちらで最初に選ばれている昔の側は 1974〜78 年で、ほぼ全国に写真がある世代だからです。
見比べるときに気をつけたいこと
世代をまたいで見るときは、写真そのものの性質の違いを頭に入れておくと迷いません。まず、撮影の季節と時刻がそろっていません。田畑の色、樹木の茂り方、影の向きと長さ、水面の明るさは、それだけで世代ごとに変わります。同じ土地が違って見えたとき、土地が変わったのか写真の条件が違うのかを、いったん立ち止まって考える価値があります。
同じ世代の中でも一様ではありません。ひとつの世代は数年かけて地域ごとに撮られているので、隣り合う場所で撮影の時期が数年ずれていることも、白黒とカラーの境目が世代の中にあることもあります。
白黒の世代とカラーの世代をまたぐときは、手がかりの種類が入れ替わります。白黒では色を頼れないので、屋根の形と大きさ、影の落ち方、建物の並び方で用途を見分けることになります。カラーになると、削られたばかりの裸地の明るい茶色、草地や樹林の緑、水面の暗さがそれぞれ分かれて見えるので、造成がどこまで進んだかは格段に読みやすくなります。同じ土地の同じ変化でも、世代によって読み取れる筋道が違うということです。
提供範囲の外へ出たときの見え方も知っておくと安心です。写真がない場所は薄い無地になります。異常ではなく、その年代の撮影がそこまで及んでいないという表示です。地図を広く引いた状態では戦前の 2 世代が選べなくなりますが、これも同じで、拡大していくと選べるようになります。
地点ページには、昔と今の写真を機械的に比べた市街化の変化の指標も出しています。あくまで大づかみな目安なので、数字だけで判断せず、写真そのものを見比べるのが確実です。
出典の表記について
年代別空中写真と全国最新写真は、国土地理院がコンテンツ利用規約のもとで公開しているものです。同院の規約では出典を記載すれば複製や再配布ができ、加工した場合は加工した旨をあわせて示すことが求められています。写真のタイルは基本測量成果には当たらないため、測量法にもとづく承認申請は必要とされていません。
カコマップでは各地点ページの比較部分に「出典: 地理院タイル (年代別空中写真・全国最新写真) を加工して作成」と表示し、地理院タイルの一覧ページへリンクしています。どのタイルがどの規約で提供されているかは、この一覧ページで世代ごとに確かめられます。標高や鉄道路線の出典とあわせて、出典とデータについて のページにも整理しています。